留学生活雑記−コラム#13:

アメリカン・サーヴィス

 お客様は神様……日本人なら誰しもが一度は耳にしたことのあるフレーズです。そんな感覚のままアメリカの店に入ると、店員の対応に不愉快な思いをしたり落胆したりすることもあるかと思います。これだからアメリカ人は、と憤るのは簡単ですが、この差の起因を考えてみるのもまたオモシロイ。日米文化の単純な違いだけでなく、社会構造の影響なんかもそんな中から見えてくるかも?




 「日本にいたときは英語に自信があったのに、アメリカに来てみたらマクドナルドでハンバーガーも満足に注文できなかった……。」英会話の難しさを主張するのによく使われるストーリーです。留学、赴任前にこんな話を聞いたりすると、アメリカとはなんと恐ろしいところだろうと感じるかもしれません。でもご安心ください。マクドナルドでハンバーガーを注文するのって実は高度な芸当ですから!

 日本のマクドナルドはアルバイトのしつけの厳しさで有名ですが、それに慣れているとアメリカの店員の対応はなかなかショッキングだったりします。店員同士のおしゃべりは当然、たらたら働いていて作業もいちいち遅いし、仕事も雑です。そしてなにより我々外国人にとってツライのは、何か言っても通じなくハァ!?って言われちゃうこと。店員が言ったことが聞き取れず聞き返したりすると、やってらんない、的な態度取られちゃったりするので、しゃべったことが通じなくても相手の話が聞き取れなくてもどっちにしろ申し訳なく感じてしまうような人の良い日本人は、なんとも意気消沈な事態となってしまうわけです。さらに怖そうな店員に限って言葉が通じづらかったりするし。もっとも、地域にもよりますけど、ファーストフード店の店員は黒人やヒスパニックや、まあ英会話教室やTOEFLなんかで聞くようないわゆる標準英語ではないことが多いので、慣れないと会話がしづらいってのもありますけれど。

 一応マクドナルドの名誉のために言っておきますと、多分マクドナルドの対応はまだマシな方だと思います。他のハンバーガー屋にしろKFCにしろ何にしろ、大抵のファーストフードの対応はそんなもんなので。そもそもファーストフード店での対応に期待する方が間違い、ってくらいに思っておいて良いかもしれません。その方が対応の良い店員に当たったときに幸せになれますし。もうちょい高級な店に行くとそれに従って対応もしっかりしてきます。

 ファーストフードではこのように顕著ですが、社会全体としても接客に対する考え方に日米で差があるのは折に触れて感じます。アメリカでは客の方が「サンキュー」って言うことが多いのですが、これに慣れると日本に帰ったときに、「ありがとう」って言うべきなのかどうなのか逆に若干の戸惑いを感じたりします。日本語の場合は敬語って概念があるので余計に難しいというのもありますが。

 もう一つ違いを感じるのは、組織を代表して謝罪することができるかどうか、という点です。日本だとまあ、同僚や上司のミスだろうと、社内の見知らぬ誰かのミスだろうと、顧客から苦情がきたらまずは会社を代表して謝るというのが習慣だと思うんですが、アメリカでは結構、「それは他の部署のヤツがやったことだから知らん」「俺がやったんじゃないから俺に文句言うな」とかって対応されることがあるんですよ。じゃあそいつを出せというとNOと言われたりして、ホント埒が明かないとはこのことかと思わせる状況が度々発生します。電話の英語って輪をかけて難しいので、苦情電話をかけるのはちょっとした決意が必要だったりします。文化の違いだとか個人主義だとかいろいろあるんでしょうけれど、この点ばかりはアメリカ人もちょっと社員教育なりなんなり改善した方がよろしいのではないかと思う次第です。

 ともあれ、諸事そんな調子なので何かと腹立たしかったり疲れたり、慣れないうちは特に苦労割増になりがちな海外生活。根性論的に、そしてちょっぴりマゾヒスティックに、こんな経験もひっくるめて精神修養の内と心得えていたら、気分は少し楽になるかもしれません。良い面悪い面、様々な文化習慣言語の違いを俯瞰的な視点から客観的に捕らえ分析してみるのもまた国内では得がたい一つの有意義な経験となるでしょう。

 以上、未だにファーストフードが一発で注文できないことのある、米国生活もうすぐ六年目のある日に想うこと。


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