アメリカ留学ガイド#2: |
入学したら、卒業プラン。 |
ついに始まる、留学生活。日本の家族や友人と別れる寂しさ、言葉や文化に関する心配、英語での授業や勉強に対する緊張、そしてそれら不安な感情と交互に出たり引っ込んだりする、夢や憧れや希望・・・。
あなたが留学を決心して、そしてここまで来るのに、いろいろなことがあったことでしょう。それは、決して簡単なことではなかったはずです。しかし、あなたはそれらの困難を乗り越え、今こうしてアメリカでの学生生活を始める準備は全て整いました。おつかれさま。よく頑張りました。さあ、憧れの留学生活の幕開けです!
と、その前にあなたにひとつ質問です。
「で、いつ卒業するの?」
入学して専攻を決めると、オリエンテーションなどを通して、まず卒業までに取らなければならないクラスの一覧みたいな表がもらえると思います。学校に来る前に、合格通知と前後して実家に郵送されることもありますが、大抵の場合、願書の作成やら、渡米の準備やらに力を使い果たしてしまって、余り目を通さないまま授業登録が始まってしまったりします。
どこの大学でも、アカデミック アドヴァイザー (大学によっては Faculty Guide など多少呼び方が変わる) がいて、あなたは来学期はこの授業を取ったら、などとアドヴァイスしてくれる仕組みになっています。しかしながら、彼らアカデミック
アドヴァイザーの勧めるクラスというのは、最悪ではないがベストとは言いがたい、そんなセレクションが多いのです。やはり学生と教授とではクラスを見る視点が違いますし、アドヴァイザーとはいえ他の教師が受け持つクラスに関する知識はごく限られたものにすぎません。
そこで、このページではオレゴン州立大(OSU)の場合を例に、一般的な大学の単位の仕組みと、卒業計画の立て方についての書こうと思います。アドヴァイザーの言うことを鵜呑みにする前に、自分の将来です、自分でしっかり計画を練ってみてはいかがでしょう。
さて、一般的なアメリカの大学プログラムで、卒業するために履修しなければならないクラスは以下の三つのカテゴリーに大別されます。
1.専攻学科の定める必修科目
2.大学の定める一般教養科目
3.Free Elective などと呼ばれる、なんでも好きなクラス
例えばOSUでは一般教養科目のことを、Baccalaureate Core Courses 、または Bacc Core Courses と呼んでいるように、大学によって多少名称やシステムの差異はありますが、四年生大学なら大体似たような感じです。
アメリカの大学システムについてもうすこし説明します。日本では入学式といえば四月ですが、アメリカの入学式は九月です。九月から翌年の八月までが、1 Academic Year 、一年度、として区切られています。と、ここまではどの大学でも共通なのですが、学期の区切り方、は学校によって異なってきます。一般的に Semester と呼ばれる二期制、 Quarter と呼ばれる三期制、 そしてその中間の2.5学期制とも呼ぶべき Trimester とが混在しています。
日本の中学や高校の感覚に一番近いのは Quarter制です。九月末から十二月上旬までの約二ヶ月半が秋学期、冬休みをはさんで、翌一月から三月中頃までが冬学期、短い春休みの後、四月から六月中頃までが春学期となります。六月中旬から九月末までは長い夏休みになるのですが、その間も完全に大学が閉まってしまう訳ではなく、オプションとして授業を取ることも可能です。ただし、開講されるクラスは他の学期と比べて非常に限られます。
Semester制は、日本の大学や一部の中学高校などにもある、前期、後期とにわかれる二期制です。九月中頃から一月上旬までを秋学期、二月から六月までを春学期としますが、それぞれ学期の途中に冬休みと春休みが入ります。春学期の終わりから秋学期の始まりまでの期間は夏休み、またはオプションとしての夏学期になります。
Trimester制は、Semester制の中から学期中に休暇が含まれてしまう不都合を取り除いたような形です。九月始めから十二月中旬までの約三ヵ月半が秋学期、やや短い冬休みの後、翌一月から四月半ばまでを冬学期とし、五月から八月が夏休み、またはオプションの春・夏学期となります。
ここでは区別の都合上 Semester と Trimester を分けて呼称しましたが、このへん実は、曖昧さの残るところです。ここでTrimester としたシステムの学校でも Semester と呼んでいるところが多いようですし、学校ごとの細かな違いもあるので厳密な定義ではありません。要は、二学期(または三学期)の通常学期と、それの他にオプションの夏学期があるということです。ちなみにOSUは Quarter Systemを採用しています。
夏学期はオプションなので、授業を取らなくても問題はありません。里帰りする学生や、現地に残ってのんびり過ごす学生も多いです。最初の数週間だけで終わるクラスを取って、その後里帰り、などのパターンもあります。もちろん、授業を取る場合はその分授業料を払わなければならないのですが、これは実は、我々外国人にとって通常学期よりも単位あたりの授業料が割安になることが多いです。里帰りしてアルバイトも良いですが、ここで上手に単位を稼ぐことができれば、ひいては卒業期間の短縮などにもつながります。特に事情がないのならば、折角ですから授業を取っておくのがオススメです。
さて、何故ここで学期制度の紹介をしたかというと、この学期ごとの違いを把握しておくことが、卒業計画を立てるに当たって非常に重要だからです。アメリカの大学を効率よく卒業するには、実は夏学期の使い方こそが鍵なのです。
いよいよここから本格的な卒業計画作りに入っていきます。必要なのは、学科で配られた卒業に必要な単位一覧、そしてどの学期にどの科目があるのかが書かれた開講科目予定表です。どちらも入学前後に送付されたりオリエンテーションで配布されたりしていると思いますが、大抵の場合大学のウェブサイトで見ることができるはずです。見つからないようでしたら、アドヴァイザーや学科のオフィスに問い合わせてみてください。また、どの学期にどのクラスを取るのか実際に計画するために、簡単なもので良いので表のようなものがあると便利です。書いたり消したり試行錯誤するので、最低数枚用意してください。(計画表の例[PDF ファイル])
まず、計画の基本ですが、
1.通常学期・・・・・・専攻科目を中心に、余裕があれば一般教養も。
2.夏学期・・・・・・ライティング、スピーチなどのクラス、一般教養科目を中心に受講。
といった組み立て方がセオリーです。一年の中で特定の学期にのみ開講されている科目はもちろん最優先で受講です。他に、多くの科目のPrerequisite (その科目を履修しなければ次のレベルのクラスが取れない)
となっている科目をなるべく早く終わらせておくと良いでしょう。
ここで普通の学生は、来学期の予定から立て始めるのですが、もっと良い方法があります。授業計画は夏学期から立て始めるのがベストです。これ、このページで一番重要なポイントです。上記のように、夏学期というのは開講されている授業が限られています。無計画に授業を取っていくと、3年生、4年生になって、夏に取れる授業がなくなってしまいます。まずは一年目の夏の計画から立ててみましょう。夏学期に自分の専攻の科目が開講されていたらラッキーです。最優先で取って良いでしょう。ライティング、スピーチなど我々非英語ネイティブに明らかに不利な科目は、なるべく専攻科目と一緒に取りたくないので、これも夏学期に済ませてしまいたいところです。ただし、この時点ではまだ計画は仮の状態だと思ってください。後で他の学期と見比べて移動したり修正したりして完成させていきます。
これとこれとこのクラスは夏学期に取ろう、といった感じで、とりあえず仮の夏の計画が定まったら、専攻科目の割り振りです。一年目はこれ、二年目はこれ、と、大まかにカリキュラムが定まっている専攻が多いと思います。ここでのコツは、一般教養科目などは後回しにして、できるだけ専攻科目を早い段階で消化することです。大抵の専攻科目は、3年目から難しくなります。1、2年生のうちにリードをつけておくと、後々かなり楽になります。
専攻科目が全て表に収まったら、表のまだ空きのある部分に一般教養を適当に放り込んでいきます。一通り埋まったら、忙しすぎる学期がないか、逆に一般教養ばかりでつまらない学期がないかチェックしてください。なるべく全部の学期の負荷が均等になるように、いろいろなパターンを考えてみてください。もはやパズルの世界ですが、じっくり時間をかけて、楽しむつもりで計画を仕上げて下さい。ただし、夏学期と卒業直前の学期以外は、VISAの規定で定められた最低単位数を割らないようにだけ注意です。(特例措置やその他許可などによって融通が利く場合もなきにしもあらず。要確認。)
一部特殊な専攻を除いて、大学のカリキュラムは夏学期を取らずに4年間で終わるようになっています。今あなたは毎年夏学期にも授業を取る計画をしているので、夏休みをフルに休む学生に比べて三学期分余裕があるはずです。この余裕をどう使うかはあなた次第です。大学を3年で卒業して時間と学費を節約するもよし。授業内容の難しくなる3、4年生での学期当たりのクラスを減らして好成績を維持するもよし。インターンシップや第二専攻/副専攻に挑戦するもよし。大学院受験や就職活動に備えて4年生で取るクラスを最小限にするもよし。折角留学するんです。そんな風にして自分の努力の結果が形として現れたら素晴らしいと思いませんか?
とはいえ、「これの中から任意の一教科を受講」といった必修科目など、どれを選んだらいいのか決めかねることも多いと思います。そんなときは、勘でもなんでも良いので、とりあえず一つ選んでみて、計画を立ててみて下さい。計画を立ててみることによって、「こっちの方が良いかな?」などと他のアイデアも出てきますし、もちろん後で計画を変えたくなったら、いつでも自分で変更すればOKです。もしかしたら、夏にどうしても里帰りしたくなるかもしれません。そうしたら、その時は帰ったっていいんです。新しい計画表をもう一枚用意して、1マスだけ計画をずらせばいいんです。無計画に授業を取っていてある時突然卒業を早めるのは困難ですが、最も効率の良い計画にそって授業を取っていてその予定を少し遅らせるのは簡単です。
なにはともあれ、面倒くさがらずに卒業計画を描いてみましょう。もし余裕があれば、第二案、第三案と、バックアッププランを同時に立てておくのも良いでしょう。 悩んだら同じ専攻の先輩学生に聞くのがベストです。ほとんどの学生が、先にあのクラスを取っておくべきだった、だの、あのクラスはいらなかった、だの、いろいろな「ああしていれば良かった!」という経験を持っていると思います。他山の石、などとという諺もありますが、この貴重な情報を利用しない手はありません。いろいろ聞いてみましょう。きっと熱意をもって答えてくれることでしょう。
このガイドはGoodな留学よりもその一つ上、よりExcellentに近づくことを目指す学生の為のガイドです。アメリカの大学はここまでしなければ卒業できない!といった類のものではないので、万一これを読んで不安になってしまった人がいましたら、その点ご安心下さい。しかし同時に、学部留学をする学生なら誰にとっても、こういった卒業計画作りは有益なものだと信じ、ここに紹介するものであります。
2003年11月21日 「COFFEE@Corvallis に ENGINE@AnnArbor」 管理人 Cao